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兎と亀マスクブログ

irekawari3.exblog.jp

プロフィール画像は、ニコニコ静画にて、黎(クロイ)様【 @kuroi02 】からお借りしました。入れ替わり小説の投稿、映画の感想、艦隊これくしょんの話題など。

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tsuniverse様のブログで、憑依がメイン。東方Projectやオリジナルの憑依漫画・イラストがあります。
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悲劇!心優しい町娘の少女と逃走中の凶悪犯の体が入れ替わってしまった!! 男女入れ替わり

悲劇!心優しい町娘の少女と逃走中の凶悪犯の体が入れ替わってしまった!!
男女入れ替わり
ファンタジー世界





ルシール
13歳。少女。
文字の読み書きはできるが、学校には通わず、母の営む雑貨屋を手伝い、日々を暮らしている。
孝行娘で、女手ひとつで自分を育ててくれた母に感謝しており、早く仕事を覚えて店を継いで、母に楽をさせてやりたいと思っている。
ある朝、家から出たところで、逃走中の凶悪犯・ゲニスと勢いよくぶつかってしまい、その時、ゲニスと強く頭をぶつけてしまう。
気がつくと、ゲニスと身体が入れ替わってしまっていた。
自分の身に起こったことを理解する間もなく、追ってきた警察に捕まえられてしまい、凶悪犯・ゲニスとして刑務所に入れられてしまう。
しかもゲニスの過去の悪事から、死刑を言い渡されてしまう。
ルシールは、このまま、凶悪犯ゲニスの男の身体のまま、死刑にされてしまうのか!?


アンナ
53歳。ルシールの母。
旦那とは死に別れており、娘のルシールはほぼ自分ひとりで育ててきた。
雑貨屋を営んでいる。
繁盛しているとはいいがたいが、本人の大らかな人柄もあり、近隣の住人からはよく利用されている模様。
娘と凶悪犯の入れ替わりに最初は気づいていなかったが、だんだんと素行が悪くなる娘を、次第に不振に思うようになる。


ゲニス
40歳。男。
強盗犯。
ケチな盗みばかりしていたが、欲を出して有名貴族の宝に手を出したことで広く指名手配されることになった。
逃走中に、町娘ルシールとぶつかり、頭を強くぶつけたことで彼女と身体が入れ替わってしまう。
目の前で自分の身体が逮捕される姿を見て、入れ替わりを事実を知り、これで無罪放免となった上、少女という何かと得をする身体を手に入れたゲニスは、自分勝手な横暴は振る舞いをすることになる。




ルシールは13歳の少女。
雑貨屋を営んでいるアンナの一人娘で、普段は店の手伝いをしている。
孝行娘で店をよく手伝い、家事もしっかりこなす。なんでもよく気が付き、明るく人付き合いも良いため、近所の人たちからの評判も良い。
父親はルシールが幼い頃に病気で死んでしまったが、それでも母のアンナが女手ひとつでしっかり育ててくれた。
ルシールは母を大切に思っており、年をとってあまり体が動かせなくなってきた母の代わりに店を切り盛りしたり、家事の大半を行ったりして、親孝行をしている。
学校は行っていないが、文字の読み書きはできるし、同年代の友人はそれなりに居る。
特にトラブルもなく、本人は幸せな人生だと思っていたが……
人生を揺るがす、とんでもなく大きなトラブルがルシールを待っていた。





第1話「肉体交換!善良な街娘と凶悪犯の男の身体が入れ替わってしまった!!」


その日の朝、朝食を食べ終え、家事も一通り終わったルシールは、アンナにちょっとした買い物を頼まれ、家を出ようとしていた。
服装は普段通りの、いつもの服装。
パススリーブで半そで、襟まわりがフリルの白のブラウスの上から、茶色のベストを羽織っており、ベストは前部分が編み上げになっている。
スカートは足首ぐらいまでのうす茶のロングスカート。
足は膝までの革製のロングブーツを履いている。
髪は後頭部でピンクのリボンをつけている。
総じて地味だが、少女らしい、可愛らしい服装だ。

家を出てすぐ、路地に出たところで……
ルシールの目に、見知らぬ男がこちらに飛び込んでくるのが見え……
次の瞬間、ドンッ!という大きな音と共に、強い衝撃がルシールの体を襲い、続けざまに、ガンッ!という鈍い音と、頭に強い痛みが襲った。
意識を失い、目の前も真っ暗になる。

「おいこら、起きろ!」
「うーん……」

地面に倒れていた男が、騎士団の男の一人に強く揺り起こされ、目を覚ました。

「え、いったいなにが……」
「なにがじゃない、凶悪犯ゲニス、強盗その他の容疑で、逮捕する!」

ゲニスと呼ばれた男は、騎士の一人に縄であっという間に縛られてしまった。

「な、なんですかこれは!私はゲニスって人じゃありません!名前はルシールです!」
「黙れ黙れ!今更他人の振りをして罪を逃れようとしてもそうはいかん!お前は牢獄行き、そののち、死刑となるだろう!」
「し、死刑!?なんですかさっきから、私はなにもしていないのに……」

ゲニスはおろおろして戸惑っている。

「え、なにこの声、私の声じゃない……まるで男の人みたいな……」

急に何かに気付いたように左右をきょろきょろと見渡すゲニス。
そこに、壁にもたれこみ、座り込んでさっきまで気を失っていた少女・ルシールが目を覚ます様子が目に入った。

「いってぇな……何が起こったんだ……」

頭を手でさすりながら、ゆっくりと起き上がるルシール。

「あ、わ、私がいるわ!なんで!?私がここにいるのに!」

ゲニスは離れたところにいるルシールの姿を見ると、大声で騒いだ。

「こら!騒ぐな!いいかげんおとなしくしろ!おい!護送用の馬はまだか!?」

「ん?なんだ?俺の声が聞こえる……げぇ、あ、あそこにいるのは……俺か!?」

ルシールは数メートル離れたところで騎士に取り押さえられているゲニスを見ると、目を見開いて驚いた。

「私があそこにいる……じゃ、じゃあ、今の私って……」

ゲニスは縄で縛られたまま、首だけを動かして、自分の体を見下ろした。
みすぼらしいボロボロの汚い男物の服。ズボンの股間は、もっこりと膨らんでいる。

「きゃああああ!なにこれ、私、男の人になってる!?」

ゲニスは取り乱し、さらにジタバタと暴れた。

「暴れるなと言ったろう!今ここで、我がお前を処刑してもいいんだぞ!」

騎士はゲニスの頬を軽く殴った。

「きゃあっ!い、痛い……しょ、処刑?」
「ああ、処刑だ。この場で殺されたくなかったら、おとなしくしていろ!まったく、罪人の分際で、手間をかけさせやがって」

殴られた痛みと、処刑という言葉を聞いて、ゲニスは言われた通りおとなしくなった。
一方、ルシールも、顔を動かして自分の体をじろじろ見たり、両手で服や髪を触ったりしている。
それが数十秒続いた後、ルシールはひどくいやらしい、野蛮な男のような下卑た笑みを浮かべた。

「うっひひひ!こりゃまさか!本当かよ!俺ってば……入れ替わってやがる!」

なにやらひとり合点がいったらしく、ルシールは膝を叩いてウヒヒと喜んでいる。
そこへ、護送用の馬が到着した。

「ほら、さっさと乗れ!」
「ち、違うんです!私、ゲニスって人じゃないんです!あそこにいる私が本当の私なんです!信じてください!」
「まだ言うのか!黙らんと、本当にぶち殺すぞ!」
「ひっ!違うんです……本当に……」

騎士に脅され、ゲニスはいよいよ押し黙った。

「あ、あなた誰なの!?私の姿をしているあなたは、まさか……」

ゲニスは最後に、10メートルほど離れているルシールに向かって叫んだ。
全部言い終わる前に、騎士がゲニスを殴り、気を失わせた。
ゲニスを乗せた護送車はあっという間に走り去った。

「いったい何の騒ぎなの?ルシール、何があったんだい?」

騒ぎを聞きつけ、店からルシールの母・アンナが出てきて、ルシールに声をかけた。

「あー?ルシールって……こいつの名前のことか?」

ルシールは自分で自分を指さしながら答えた。

「なに言ってるの、あなた以外のルシールがどこにいるの。騎士様と護送車が去っていくのが見えたけど……なにか事件でもあったのかい」
「……どうやらこいつの母親か……」

ルシールは下卑た邪悪な笑みのまま小声でつぶやいたが、すぐに少女のような満面の笑みに切り替えた。

「うん、お母さん!ゲニスって凶悪な犯人が逃げてたみたいだけど、騎士様がすぐに捕まえてくれたの!」
「なんだ、そうだったのかい。物騒だねぇ。何事もなくてよかったけど、ルシールも気を付けなさいよ」
「わかった、気を付けるね!」

「うひひ……こりゃほんとにラッキーだぜ。信じられねぇが、さっきぶつかった衝撃で、この嬢ちゃんと入れ替わったらしい……あっちの俺は捕まってくれたし、自由になった上に、こんな可愛い娘になれたなんて……へっへっへ、今なら神様を信じてやってもいいな」

「ルシール、なにをぶつぶつ言ってるんだい。頼んでおいた買い物、済ましてきておくれよ」
「はーい、お母さん。ところで……買い物って、なにを買ってくるんだっけ」

アンナは娘の発言にあきれながら、ルシールと共に店の中へと入っていった。

「どうして……こうなっちゃったの……神様、見ていてくださったら、どうか私を助けて……」

護送車の中、縄でがんじがらめに縛られたゲニスは、しわだらけの顔を涙で濡らしながら、神様に助けを請うていた。








第2話「私の身体を返して!」




ゲニスは王国の騎士たちによって王都へ護送され、刑務所へと収容された。
過去に何度も悪事を重ねてきたゲニスは裁判も行われず、即座に死刑が言い渡された。

「出してーーーーー!この私は本当の私じゃないの。ザイツブルグという街に住んでいる、ルシールっていうただの一般人なのよーーーー!」

牢屋の中で、ルシールはもう何百回目かの同じセリフを叫んでいた。
死刑の期日はもう三日後に迫っていた。
このままでは、ただただ死を待つのみだ。

「どうしてこうなったの……あの朝、私はただ普通に家を出ただけなのに……」

叫び疲れ、ゲニスは牢獄の冷たい石の壁にもたれかかった。
あの、ルシールとゲニスが入れ替わった日から数日が経過していた。
いきなり他人の身体にされ、いきなり罪人扱いされ、牢屋に閉じ込められ、ゲニスは混乱するばかりだったが、牢屋でなにもできず、長い時を過ごしているうちに、だんだんと状況が呑み込めてきた。

(なぜかわからないけど、私はこのゲニスって人と入れ替わったんだわ)

ゲニスは改めて自分の身体を見た。
何日も風呂に入っていないのか、とにかく汚い。体自体も汚いし、着ている服も汚い。服は汚れまくりで、土や埃まみれだ。
腕や足には毛がたくさん生えている。
特に腕は、半そでなので常に露出していて、いやでも腕の毛が目に入る。

(毛だらけで気持ち悪い……それに臭い……これが今の私の身体だなんて)

そして、ズボンの股間の部分。見ると、三角状にテントのように盛り上がっている。
勃起しているのだ。

(肉の棒みたいなのが生えている感触がずっとある……こんなので、おしっこもしなきゃいけないなんて)

死刑が確定しているとはいっても、毎日の食事と水は、わずかながら出される。
ゲニスも、当面は生きるためにそれらの食事と水を口にせざるを得ない。
当然、水を飲めばおしっこが出るし、食事をすれば大便も出る。
排泄は牢屋にある汚い便器でするしかなかった。
大便はともかく、おしっこの時が、ゲニスは嫌で嫌で仕方なかった。
女のときにはなかった、おちんちんを使わなければいけないからだ。
おしっこのとき、嫌でも、今の身体が男であることを感じさせられる。

そして、おしっこをしないときでも、おちんちんは常に勃起したまま。
ゲニスはまだ若いため、そういう知識はほとんどなかったが、こうして男の身体になると、いやでも男の生態を実感させられる。
おそらく、ルシールの女性の精神に、男のゲニスの身体が反応しているのだろう。ゲニスのおちんちんは常にギンギンの勃起状態のまま。
自分の臭い体臭、汚れた服の匂い、勃起したままのちんちんの感触。
24時間、ずっと「男」であることを意識させられ、中身のルシールの精神は、だいぶ参ってきていた。

牢屋に閉じ込められ、死刑も確定している。
もう自分は助かることもない。
理不尽だが、もうあきらめるしかない。

そのように、ゲニスは一時はあきらめの境地に達しようとしていたが……

いよいよ、死刑が明日に迫り。
自分の死期が確定したことで、逆にルシールの生きる望みが強くなった。

(いや……まだこんなところで、こんな、誰だか知らない人になったままで死にたくない!)

それに、もう長いこと会っていない母・アンナのことも思い出された。

(お母さん……どうしているのかしら。本物の私の中にあの凶悪犯が入っているとしたら、お母さんも、ひどい目に遭っているんじゃないかしら。そうでなくても、お母さんももう年だし……心配だわ)

母・アンナもその人柄ゆえに人々からの人望は厚いが、身内となると、ルシール一人しかいない。
アンナにいざ何かあった場合、すぐに助けてあげられるのは、ルシールしかいないのだ。
それに、ルシールは自分をここまで育ててくれた大恩がある。

(そうよ……私をここまで育ててくれたお母さんに、私はまだまだ何もしてあげられていない!こんなところで……死ぬわけにはいかないわ!)

ゲニスは、どうにかしてここを脱獄することを決めた。
しかし、ここは王都の刑務所。
監視の目も厳しい。
なんの知識も経験もないゲニスが脱獄できる可能性は、限りなくゼロに近い。

だが、そんなゲニスに、千載一遇のチャンスがやってきた。
ゲニスの死刑が明日の朝に迫った、その前日の夜。

他の牢屋の囚人たちが集団で決起し、脱獄を図ったのだ。
刑務所は大混乱。
大騒ぎの刑務所の様子に、ゲニスは目を輝かせた。

(チャンスだわ……これに乗じて、逃げるしかないわ!それで、どうにかしてお母さんの元へ帰るのよ!)

「お願い、そこのあなた!私をここから出して!」

ゲニスは大声で、自分の牢獄の目の前を走っていく囚人に声をかけた。

「ああ?なんだ、俺たちは逃げるのに必死なんだ、お前みたいなやつに構っている暇なんかねぇよ」
「お願い、ここから出して!なんでもするから、逃走だって手伝う!だから、連れてって!」

ゲニスは必至だった。なにせ、明日には自分の死刑が確定しているのだ。このチャンスを逃せば、もう確実に死が待っている。必死にもなろう。

「あばよ、自分でなんとかしな……って、ん?あんた、ゲニスかい?」

目の前の囚人が、なにやら自分を知っている素振りを見せた。
ゲニスは、思わずくいついた。

「そう!そう!ゲニスよ!私を知っているの!?」
「そりゃまぁ、連続強盗犯で有名だからな。へぇー、確かに、あんたを連れ出せば、いろいろ有益かもな」

どうやらこの男は、ゲニスを多少知っているらしい。
自分からゲニスを名乗ることは、ルシールはとても嫌だったが、この際、そんなこと言ってられない。命が助かり、ここから逃げ出せるなら、ゲニスはなんでもやるつもりだった。

「そう!そうでしょう!盗みでも扉を開けるのでも、なんでもやってあげるわ!だからここから出して!」
「ああ、分かったよ。ちょうど牢屋の鍵束を持ってるんだ……これで開けてやるよ」

男は持っていた鍵束から鍵をひとつ選び、ゲニスの牢屋の鍵を開けた。
ゲニスは急いで牢屋から出た。

「ああ……ああ!助かったわ!ありがとう!」

ゲニスは涙を流し喜び、男に抱き着いた。

「うわっ、男同士で抱き着くなよ、気持ち悪いな。それに、なんか女みたいな喋りをするやつだな。まあいいや、ほらついてこい、こっちに逃げ道がある」
「はい!お願いします!」

ゲニスは男についていき、刑務所からの脱出を図った。


刑務所から多数の囚人が脱走したが、騎士たちの素早い動きもあり、ほとんどの囚人がすぐに捕まった。
しかし、ゲニスと、連れの男はなんとか城の外へと逃げおおせた。
ルシールは、店の手伝いで何度も王都を訪れており、時間があるときに裏路地を歩いたりして、あちこちの道に通じていた。その知識が、役に立ったのだ。

「へっへっへ、あんたを連れ出して正解だったようだな」

ゲニスと男は馬車で逃走中だ。男は下品な笑いで、ポンポンとゲニスの肩を叩いている。

「ここまで逃げればもう大丈夫だろう。約束通り、ここで降りてもらうぜ」
「構わないわ。えーと、お名前は?」
「俺はザンボア。へへっ、とはいっても、お前さんとはもう会うことはないだろうがな。じゃあな」

そう言うと、ザンボアはゲニスを馬車からおろし、自分はそのまま馬車で西へと走らせ、地平線のかなたへと消えていった。
結果的に、ゲニスは罪人をひとり見逃したことになるが、それはそれ、ゲニスは今は気にしないことにした。

「お母さんのところに戻って……そして、私の身体を取り戻さなきゃ!」

ゲニスは故郷の街へ向かって歩き出した。




第3話「大逆転!?本当の私を取り戻せ!」



アンナは一人娘・ルシールのことで頭を悩ませていた。
数か月前から、娘の素行が極端に悪くなったのだ。
以前は親思いの孝行娘だったのだが、ある時を境に、突然家事も店の手伝いもしなくなった。
それどころか、毎日外で遊びまわり、最近は家に帰って来ないことも多い。
たまに家に帰ってきたら金をせびる有様。
さらには、母親のアンナに黙って家の金を持ち出すという、泥棒まがいのことをやったこともある。
外に出ているときは、街の中でも評判の悪い連中とつるんでいるらしい。
服装も、以前は年頃の女の子らしいごく普通の服装だったが、最近はミニスカートを履き、極端に露出した格好をするようになった。顔も、年に合わない化粧までしている。
さらには、言葉遣いも悪い。最近はアンナを「ババァ」呼ばわりしている。
アンナはまるで不良みたいになったルシールをことあるごとに叱ったが、効果はなく、ますますルシールは不良と化すだけだった。
最近はもう、親子断絶といっていいぐらい、不仲になっている。

「いったいどうしたのかしら……あの子。以前はあんなじゃなかったのに……」

アンナは家の中で一人ため息をついていた。
娘の素行が気になり、商売などやる気も起きず、店は閉店状態になっている。
ただでさえ儲けの少ない商売だったところに、店の閉店で収入がなくなり、少ない蓄えも、実の娘に持っていかれる有様。
さらに年による身体の衰えもあって、アンナはすっかり精神がまいっていた。
精神の衰えは身体にも影響を与え、ここ数日は身体の調子を悪くしていた。

「ごほっ、ごほっ、あたしも年かねぇ。でも、娘のあんな姿をみていたら、まだまだ死ぬに死ねないよ」

アンナは娘の変貌の原因について考えていた。
最初は、年頃の子供によくある反抗期とも思っていたが。
あれは、年頃の反抗期なんてものを超えている、と確信していた。
それは何が原因か、とはっきり分かるほどのものではないが、とにかく、反抗期などとはまた違う、なにか大きな別の原因があるような気がして仕方なかった。

トントン、トントン。

その時、不意に、部屋の窓を叩く音が聞こえた。
アンナが気になって音のほうを向くと、窓の向こうに、影になっていてよく分からないが、男のような人物が立っているのが見えた。

「お母さん……!お母さん……!」

その人物は、男の低い声で、なにやらお母さん、お母さんとしゃべっている。

「ひゃっ!?な、なんだい!?」

不審者かと思い、思わず椅子から立ち上がるアンナ。

「お母さん……私よ、ルシールよ。お願い、信じて……私、帰ってきたの!」

アンナはさらに驚いた。
窓の向こうの、あきらかに男と思われる人物は、自分の娘と同じ名前を名乗ったのだ。

「な、なんだいあんたは!私の娘は、あんたみたいな男じゃないよ!出てかないと、警察を呼ぶよ!」

アンナの反応も当然だった。見知らぬ男が窓の外から訳のわからないことを言っているのである。不審者としか思えない。

「お願い、お母さん、信じて。お母さんに信じてもらえなかったら、私、もう生きていけない……」

しまいには、男は窓の向こうで泣き出した。目から大粒の涙が流れている。
よく見ると、人相も悪い。身なりもみすぼらしく、外見だけでは、到底信用できるような人物ではない。
しかし、アンナはそのあまりにも真剣なしゃべりと、必死の涙の形相に、思わず引き込まれるものもあった。

「お願いお母さん、思い出して。あの日、買い物を頼まれたのは、リンゴ10個とオレンジ10個だったわ」
「えっ!?」

不意に、アンナはその男が言った言葉に引き込まれた。
ちょうどそれは、娘のルシールが態度が悪くなったきっかけの出来事だったからだ。
あの日の朝、アンナはルシールに買い物を頼んだ。だが、ルシールは買い物の内容を忘れてしまっていた。仕方ないと思い、もう一度買い物の内容を伝えたが、その日、ルシールが買ってきたものは、自分で食べるお菓子類ばかりだった。このときを境に、ルシールは自分勝手な行動をとるようになったのだ。
そのため、アンナはこの時の買い物の内容をよく覚えていた。買い物の内容は、リンゴ10個とオレンジ10個。この男は、その内容をピタリと言い当てたのだ。

「な、なんであんたがそれを知ってるんだい……」

思わず、アンナは部屋を出て、外にいる男に声をかけた。

「やっと……信じてくれた……お母さん、私よ、ルシールよ」
「ルシールだって!?でも、あんたのその姿は……」
「身体が、入れ替わってしまったの。この、犯罪者の男の人と……お願いお母さん、信じて!私はルシールよ!」
「入れ替わった!?うーん、でも……」
「お母さん、説明は後でするわ!お願いお母さん、中に入れて!今の私は犯罪者で、騎士の人たちに追われているの!」
「うーん、ええいっ!わかったよ!中にお入り!」

アンナは少し迷ったが、決心して、目の前の男・ゲニスを部屋の中に入れた。





「ルシール……あんた、本当にルシールなんだね!」

アンナはテーブルを飛び越え、ゲニスを抱きしめていた。
ゲニスは相当な日数、風呂の入っておらず、悪臭の塊のようになっていたが、アンナは気にせず抱きしめた。

「ありがとう……ありがとう、お母さん、信じてくれて」

ゲニスは滝のような涙を流し、喜んでいる。
ゲニスもまた、アンナをしっかり抱きしめていた。

あれから、時間はかかったが、ゲニスはこれまでの経緯を詳しく話した。
あの日の朝、強盗犯ゲニスとぶつかり、入れ替わったこと、
刑務所に連れていかれて死刑になりそうになったっこと。
それと、娘として、信じてもらえるよう、過去の出来事を詳しく話した。それはまさに、母と娘の間でしか知らないことだった。さらにゲニスはダメ押しに、料理や洗濯、店の仕事など、家事などもやってみせた。
ここまでくれば、もう疑いようはなかった。見た目は別人の男だが、中身は、自分が今まで育ててきた、実の娘ルシールだった。

ゲニスは風呂に入り、一応、身なりはさっぱりした。
夜、二人はこれからの行動を話しあった。

「お母さん、私、本物の私に会って、もう一度ぶつかってみるわ。たぶん、頭を強く打ったのが原因で、入れ替わったのだと思う。早く元に戻らないと、騎士さまたちの追手が来て、捕まって死刑になっちゃうわ」
「そうだね、あたしもやれることは協力するよ。でも最近のあの子……いや、もうアイツだね。ルシールの身体に入ってるアイツは最近毎晩遊び歩いていて、今どこにいるか分からないんだよ」
「うーん……困ったなぁ……早くしないと、私がみつかる可能性も高くなる……」

行方が分からなくても、とにかく探すしかなかった。
夜中だが、二人は出かけて、ルシールを探すことにした。



ルシールは悪友たちと遊び歩いていた。
女もいるが、男の数が圧倒的に多い。
ルシールはミニスカに露出度高めのブラウスを着て、うっすら化粧もして、水商売の女みたいな恰好をしていた。
未成年なのに酒を飲んでいるのか、顔が赤い。
カジノや酒場、ダーツにビリヤードなど、遊び場で遊びまくっている。

ルシールは幸いにも、男遊びには走らなかった。
男友達はいても、遊ぶばかりで、男と女の関係になったりはしていなかった。
それというのも、ルシールがまだ13歳と若く、あまり身体が女性として発達していないこともあった。
中身のゲニスは女の身体になれたということで、最初は喜んで自分の身体をいじったりしていたが、あまり気持ちよくないことに気付いた。胸は大きくないし、腰はくびれていないし、尻もあまり大きくない。髪も長くない、顔立ちも幼いしで、とにかくあらゆる面が子供っぽすぎた。さらに、初潮すらまだというのも、ルシールの子供っぽさを際立てていた。

ルシールはそういう方面はさっさとあきらめた。
どうせ、自分はまだ若い。
何年も経って、女として成熟してくれば、好きなだけこの女体を楽しめる。
そういうわけで、ルシールは今は我を忘れて遊べるだけ遊ぶことにした。
金が足りなくなったら親にせびった。それでも足りなくなったら、無断で親の元から持ち出した。

それで数か月遊んできたが、その金も尽きてきた。

「そろそろ、また金を取りに戻るか。ふう、この娘の身体がもうちょっと大人っぽかったら、適当な男に言い寄って、金を巻き上げてやるのによぉ」

ルシールは悪友たちに別れを告げ、酒に酔ったふらふらの足取りで、路地裏の自分の家へと歩いて行った。





アンナとゲニスは一晩中、街中でルシールが行ってそうな場所を歩いて回ったが、ルシールの居所は分からなかった。
ルシールの悪友たちには何人か出会ったが、もう既に別れて時間が経っているので知らない、さらには知っていてもお前たちには教えない、とまで言われた。
一晩中、歩き回って、しかも成果はなかったので、アンナとゲニスは体力的にも精神的にも疲れてしまった。特に、アンナは年をとっているのもあって、ゲニスの数倍は辛そうにみえる。

「はぁ、はぁ……みつからなかったねぇ……」
「お母さん、ありがとう、もう十分よ。もう家はすぐそこだわ。お母さんだけでも帰って、家で休んで」
「なに言ってるんだい、騎士様たちが追ってきてるんだろう?早く、あの偽物のルシールをみつけなきゃ。うっ、はぁ、はぁ」
「ほら、お母さん、息が切れかけてるじゃない。私は……今は一応男だからまだ体力はあるわ。まだ少しその辺を探してみる」
「でも……」

アンナがまだ食い下がろうとしたとき。
時間的にも、ちょうど朝日が昇ろうとしている、その時だった。

「あぁ……?なんだぁ、俺がいるぞ」

ルシールが、家の前まで帰ってきた。
懐かしい、聞きなれた声に、思わずゲニスは振り向いた。

「わ、わ……私だわ!!やっとみつけた!!」
「なんだって!?」

ゲニスが大声で叫んだことで、アニスもびっくりして振り返った。

「なんでお前がここにいるんだよ……今頃死刑になってるんじゃないのか!」
「残念ね……そうはいかなかったわ!さあ!私の身体を返してもらうわ!」

ゲニスはすぐさま走り出して突進した。
一晩中の捜索で体中疲れ果てているはずだったが、それでも走る力が出た。
この先生きるか死ぬか。
まさに、生き残るための全てがそこにあるのだ。全力が出ないわけがない。

一方のルシールのほうは、元の自分の身体が脱獄してここまで追いかけてきているなんて、想像すらしていなかったため、対応が遅れた。
まだまだ、思考が現状に追いついていなかった。
それに対し、ゲニスのほうはルシールの身体と会うことを念頭にここまで行動してきた。
その思考の差が、二人の対応の違いとなった。
呆然としているルシールは、ただただ、ゲニスの突進を受けるしかない。

(いける……このままの勢いで走って、頭をぶつければ、きっとあの時みたいに……!)

ゲニスは成功を確信した。


しかし、その時。
大きな邪魔が入った。


いきなりゲニスの横方向から何者かが現れ、ゲニスに体当たりした。

「ぎゃっ!?」

いきなり吹き飛ばされ、倒れこむゲニス。

「い、痛い……なんなの……」

倒れたときに肩を怪我したのか、肩をおさえながら立ち上がるゲニス。

「あ、あなた方は……」

アンナはゲニスに体当たりした者を見た。

「王家直属騎士団団長、トルストイだ。脱獄犯ゲニス、みつけたぞ!」

「ひゃはぁーーーーっ!こりゃいいタイミングだぜ!」

呆然としていたルシールは、騎士団団長とその他大勢の騎士団たちの姿を見て、満面の笑みで喜んだ。
今のルシールにとっては、まさに頼もしい援軍だからだ。

すぐさま、ゲニスは団長配下の騎士たちによって取り押さえられた。

「な、なんで……なんでこんなときに……あと、あともう少しだったのに」

ゲニスは一転、青ざめた表情で愕然としている。
それはそうだ。騎士団に捕まったら最後、今度こそ問答無用で死刑だ。
今、目の前、数メートル先に、元の自分の、少女としての自分の身体がある。
しかし、元に戻れない。
あと十秒、いやあと数秒だったかもしれない。
あのまま走ってぶつかっていれば、元に戻れたかもしれないのだ。

自分はこのまま、この汚い犯罪者の男の身体で死ぬんだ。
あまりにもやりきれない、絶望感がゲニスの胸を包んでいった。
ゲニスは悲しみさえも通り越して、ぽかんと、呆けたような表情になった。
ゲニスはもう、全てをあきらめたのだ。

「へっへっへ、走ってきたということは、あの時の再現をしようとしていたのか?いい考えだったが、ちと遅かったようだな」

「おいそこの娘、ゲニスになにかされそうになっていたが、大丈夫か?身体はなんともないか?」

騎士団長がルシールに声をかけた。

「はい、騎士団長様。私の身体は……ほら、なんともありませんわ。ほほほ……」

ルシールはわざとらしく、女っぽくしなを作って答えてみせた。

「よし、それでは引き上げるぞ!王都に戻り次第、こいつの死刑を実行する!」

ゲニスは騎士たちに連行されるままになっていた。死刑という言葉も、もう耳に入っていないようだった。

「る、ルシール……」

アンナは、騎士たちに連行されるゲニスをただみつめることしかできなかった。
このままでは、ルシールは連れていかれ、ゲニスという犯罪者の男のまま、殺されることになる。
そうなると、向こうにいる偽物のルシールが本物になってしまう。
今はまだ13歳だが、もう少し成長すると一人前の女性になる。
自分の「女」を自由に使えるようになったら、いったいどんな行いをするのか。
自分の身体でもないのに、大事な娘の身体を奪い、勝手な行いをする、卑劣で外道な男。
それが、凶悪犯ゲニスだ。

許せない。

それになにより、娘を助けたい。
ここまで帰ってきただけでも大変なのに、ここ数日、家に帰ってきてからは前よりも自分に優しくしてくれた。そんな時間があったら、自分の身体を探しに行きたいだろうに。
自分の身体よりも、親の身体を心配してくれる優しい娘のために、親としてなにかしてあげたかった。
50過ぎのおばさんの自分が、この状況でなにかできるはずもない……と思っていたが。
凶悪犯に対する怒りが、娘に対する親としての愛情が、アンナの身体を無意識に動かした。

「たぁーーーーーーーー!!!」

気がつくと、アンナは突撃していた。
ゲニスを連行しようとしている、騎士たちに向かって。
ゲニスは素手で既に抵抗の意思もなく、人数も圧倒的に多い自分たちが有利という、騎士たちの油断もあった。
それに、立ち止まって押さえつけているときより、歩いている今は、多少、ゲニスを押さえつけている力が弱まっているということもあった。
そんな奇跡のようなタイミングに、アンナは、騎士たちに捨て身の突進を仕掛けた。

ドシン!

「うわ!?」

いかんせん中年女性ひとりの体当たりであるため、威力は低かったが、想定もしていなかった方向からの体当たりということもあり、騎士たちの姿勢を崩すには十分だった。
そしてそれは、騎士たちの手からほんの一瞬だが、ゲニスを開放することに繋がった。

騎士たちの拘束から解かれた今、ゲニスの思考が一瞬で覚醒した。

今、母の声が聞こえた。
すなわち、これは母がくれたチャンス。

「あーーーーーーーーーーーーーっ!!」

ゲニスはとにかくわき目もふらず走り出し、ルシールに突進した。

「は?」

ガン!!!

ルシールの目の前にゲニスの顔が迫ったかと思った次の瞬間、強い衝撃がルシールの頭を襲い、ルシールの視界が真っ暗になった。





次にルシールが目を覚ましたとき。

ゲニスが騎士団に捕まえられ、ボコボコにされ、顔が腫れあがっているのが見えた。
その向こうでは、母のアンナが騎士団長に厳しく咎められていた。

「え、まさか……私……」

ルシールは両手を自分の目の前にかざした。
見覚えのある、少女らしい小さい白い手。
自分の身体を見てみる。派手な服はまったく見覚えがなかったが、さっきまで「あのルシール」が着ていた服だと分かった。
そこまで理解して、ルシールの心に喜びが湧いてきた。

「やったーーーーっ!!私、元に戻れたんだわ!!」

ルシールは飛び上がって喜んだ。
が、すぐに、母がなにやら咎められていることに気付き、慌てて母の元へと走った。

「まったく、なぜあんなことをした!?下手をしたら逃亡されていたし、あなたの娘さんだというあの少女も危険に晒されたんだぞ。
「すみません、すぐにでも娘のところへ行って抱きしめてあげて安心させてあげたい一心で、つい飛び出そうとしてしまいました。そうしたら騎士様に当たってしまって……本当に申し訳ございません」

アンナは散々絞られたが、娘を思う母親の気持ちというものを騎士団長も分かってくれたらしく、最終的には何のお咎めもなかった。

ゲニスは厳重な檻に入れられ、騎士団によって護送されていった。
あれだけ痛めつけられていたら、そもそも逃亡もできないだろう。




それから月日が経って。

ルシールは、風の便りで、凶悪犯ゲニスが王都で死刑になったことを聞いた。
大変な目に遭ったが、もう終わったことなので、特に何の感慨も抱かなかった。



ルシールは母のアンナから雑貨屋を継いで毎日元気に商売している。
その一方で、店を引退した母アンナとの同居も続いていて、彼女の世話もしている。
派手な刺激などはないが、穏やかで平穏な、確かな幸せがそこにはあった。
そしてこれからも、その幸せは続いていくだろう。

「ルシール!今日はあたしも店を手伝うよ!」
「もう!お母さんはおとなしくしててってば!」

少女は、心の底から明るい笑顔を浮かべ、笑っている。




完結。





あとがき。

実は冒頭、凶悪犯と町娘が入れ替わり、凶悪犯が連行されるところ、までは元ネタがあります。
イラスト投稿サイトpixivでそういう入れ替わり漫画がありました。
2、3年前ぐらいだと思うのですが、保存はしていませんでした。
あとになってまた見たいと思いタグ等で検索してみてもみつかりませんでした。おそらく、作者様本人が削除されたのだと思います。

絵柄がすごく私好みで、特に町娘がすごく可愛かったです。
無実の女性と凶悪犯の入れ替わりは、現代設定だとよくありますが、ファンタジー世界ではそういうのはとても珍しく、その点でも気に入りました。

元ネタの漫画は未完だったので、無実の女の子を助けたいと思い、自分で続きを書いてみました。






by usagitokame_mask | 2018-04-20 21:45